城崎温泉とコンタックスT3とFUJIPRO400H

小説の舞台に立つ不思議さ

コンタックスT3とFUJIPRO400Hで城崎温泉の一の湯を撮った写真

城の崎にて。高校生の頃に読んだこの小説が大好きです。いつか行きたいなあと思っていた舞台の温泉街を楽しみ、フィルムで写真を撮ってきました。

大阪から特急列車に乗って3時間弱。ついた頃はまだ昼前で街は静か。平日ということもあって、そぞろ歩きするにはちょうどいい人混みでした。流れるゆっくりとした時間。今回の旅では温泉でゆっくりすることが目的。果たすにはちょうどいい場所そうです。

小説の舞台に立つ、というのは不思議な気持ちです。あるはずのない場所に来てしまったような、もしくは自分の感覚の中に入り込んだような。驚いたのは心の中で描いていた城崎温泉と今、実際に見ている景色にズレがあまりなかったこと。この場所を志賀直哉さんが今、歩いていてもやぶさかでは無いなあ。いい意味で変わらずにきた、この場所の良さでしょうか。

ちょっと昔の作品も読んでたほうが箔が付くかなあ、大学の面接でもネタになるなあ。見栄っ張りの私はそんな気持ちで名作と呼ばれる小説をめくるようになりました。三島由紀夫さんの金閣寺、川端康成さんの伊豆の踊り子雪国、そういったモノを読みました。城の崎にてはそんな中で出会いました。この本は命というものへの精神的な記述が殆どを占めます。ちょっとストーリーを見てみましょう。

東京山手線の電車にはねられ怪我をした「自分」は、後養生に城崎温泉を訪れる。「自分」は一匹の蜂の死骸に、寂しいが静かな死への親しみを感じ、首に串が刺さった鼠が石を投げられ、必死に逃げ惑っている姿を見て死の直前の動騒が恐ろしくなる。そんなある日、何気なく見た小川の石の上にイモリがいた。

驚かそうと投げた石がそのいもりに当って死んでしまう。哀れみを感じると同時に生き物の淋しさを感じている「自分」。これらの動物達の死と生きている自分について考え、生きていることと死んでしまっていること、それは両極ではなかったという感慨を持つ。そして命拾いした「自分」を省みる。

Wikipedia

自分に影響を与える本があります。そういう本は雷にドーンと打たれたように感覚を変えるというよりは、あとからジーンと効いてくる。この小説もしかり。命というものを考える時、自分の芯になっているのが志賀直哉さんです。

 

とりあえずペタペタと歩きます。駅前から連なる道はお菓子屋あり、地酒屋あり、旅館もまたありで目が飽きません。なんとなく下調べはしてきました。美味しそうだと目星をつけた海鮮丼屋さん。グーッと胃が鳴ってきたし、とりあえずお腹を満たすことにしましょう。

まずは腹ごしらえとビール

城崎温泉で食べた海鮮丼

クーッ。なぜ昼から飲むビールはこんなにうまいのだろう(列車の中ですでに飲んでましたが)。温泉街に居る時は意識しませんが海が近いんですね。新鮮な魚が嬉しいです。今回は妹との旅なので何も気を使いません。予定も無く、気を許せる人と、城崎温泉。これは最高だ。ということでビールを2杯飲み、すでに出来上がってしまいました。

そぞろ歩きは続くよ

お腹も一杯になったし、また歩こう。どこでも絵になるなあ。城崎温泉は思ったよりもコンパクト。駅前から一番奥のロープウェイまで徒歩で回ることができます。

城崎メインストリート

城崎温泉のメインストリート

ここが城崎のメインストリート。橋が何本もかかっていて、定番の写真をスポットになっています。柳が揺れて風情が満載。

一路、山頂へ

城崎温泉を山から俯瞰

街を抜けるとロープウェイ。頂上まで行くと城崎温泉が一望できます。こう見ると海が近いんだなあ、としみじみ。風も気持ち良くて最高でした。

FUJIPRO400H、青とか緑がキレイに写るフィルムです。このショットは森と空が良い感じ。何気ない写真ですがフィルムで撮ると、その時の気持ちが写真に乗りますね。後で見ても空気を思い出します。

山頂のカフェのコーヒーの写真

山頂にはカフェがあり、コーヒーがいただけます。ズズズ〜。まったりとした空気。誰も急ぐ人がいないんですね。世の中で時に追われていない人間ばかりの空間は少なくなりました。貴重です。居心地がいい。

フィルムだと同じ写真撮りがち問題

城崎のメインストリートを再び撮ってしまった写真

ここでちょっとフィルム写真のお話を。城崎のメインストリートの写真、沢山撮ってます、私。

うまく撮れてなかったら怖いし、もう一枚撮っとこう。フィルムを使っているとそう思う事があります。だから見返すと同じ写真ばかり。カメラを信用して大事な場面でも一枚で勝負したいものです。

さらに今回は現像帰りの写真を見て、あそこでも撮っとけば良かった!と思うスポットが沢山ありました。裏路地も素敵だったし、文芸館もまた素敵だった。これはフィルムとデジタルを併用した弊害だと思います。デジタルで撮っといたからまあいっかって。フィルムカメラだけでいけば良いのはわかってるんですがなかなか勇気が出ないんですよね。

いつかフィルム一本で旅にでたいものです。

「 三木屋 」志賀直哉さんが小説を書いた宿

15時になり、一度宿にチェックインすることに。今回のお宿は城の崎にてが書かれたお宿、三木屋さん。志賀さんが過ごした頃からはリニューアルもされているそうですが、当時過ごされた部屋も残っているそうです。

三木屋の庭をフィルムカメラで撮った写真

とりあえず部屋で休憩。志賀さんの百鬼夜行という小説にも登場する庭。こちらも小説の舞台になった場所とあって感慨深いです。

三木屋の木の写真

部屋の軒先まで木が迫っておりすごい迫力でした。

三木屋の縁側の写真

三木屋で浴衣を着た女の子の写真

縁側に光が差し込み、静か。ボーッとするには最高の環境。しばし庭を見て過ごします。1つやりたいことがあったのでとりかかることに。

本と温泉

城崎温泉限定販売の本

文芸館で買った城崎温泉のみで販売している小説。

  • 志賀直哉「城の崎にて」と解説
  • 万城目学「城崎裁判」
  • 湊かなえ「城崎にかえる」

これらを読んでから外湯めぐりをしたかったのです。どれも短編で一冊15分ほどで読めました。万城目さんと湊さんの本は初読。舞台はもちろん城崎温泉。さっき歩いてきた町並みが書かれていてテンションがあがります。小説としても面白く、この地に来たら是非買ってもらいたいです。

外湯めぐり

一の湯前で妹を撮った写真

一の湯に浸かりながらさっきの小説に思いを馳せます。街を歩きながら「万城目さんの小説に出てきたのはここかな?」そんな楽しみ方が良い感じ。

そんなこんなでいくつか外湯をめぐりました。私は御所の湯がキレイで広くて好きだったなあ。

牛乳瓶をコンタックスT3で撮った写真

ピンぼけもいい思い出です。

いつかまた、城崎に帰る

いくつかの外湯をめぐると日が落ちて辺りは夜。街灯が暗いこともあってフィルムの出番は終わりました。この後、宿でご飯をいただき、再び外湯をめぐることに。再び宿に帰ってパタリと就寝。

城崎温泉は温泉街っぽい温泉です。町並みがキレイだし、緩やかな雰囲気があるし、時間もゆっくり。心を休めるには最高の場所です。あと写真を撮るのにも。

文豪に愛された場所、というもの気に入りました。小説の舞台になり、そこら中に偉人の碑や文芸のニオイがあります。

この場所は今回で終わりではない、そんな気がするなあ。

次はフィルムカメラだけ持って城崎に帰ってきたいと思います。